春闘大会当日。
「朝8時半に迎えに行くから、8時半にはトイレ済ませて部屋の鍵閉めてアパートの前で小石蹴りながら待っとけ。」と西條さんに言われていた私。
でもあの人に家の場所を知られたら絶対溜まり場にされそうなので、少し離れたコンビニで待ち合わせしていた。はずなのに。
なぜか8時にうちまで来られた。早い。早いしうっとうしい。
しかも西條さんと野口さんの二人で来られて、うちに押し入られそうになるを阻止するのに30分かかった。予定通り8時30分に出発である。
「成世、朝マック食べる?」
助手席に座る野口さんの呼吸が乱れている。でも顔だけ“i'm lovin' it”の笑顔。うちへの押し入り攻防で暴れた30歳が、マックの紙袋を渡してきた。
「……え?バーベキュー前に、マックグリドル3つですか?中年太りとか気にしないんですか?」
「僕、食べても太らないもーん。」
「(女の大敵。でも35歳を過ぎれば思い知るタイプ。)」
車中のマック臭がえげつない。
私が窓を開ける。西條さんが、「俺の車にマック臭をつけるな!」と、マックグリドルを片手に頬張った。
車内の密室には、西條、野口、成世という御三家が集まってしまった。私が“郷”という名前じゃなくて本当に良かったと思う。
「くやしいけれどー♪お前にムチュウっ!」
「ギャランドゥ♪」
「ギャランドゥう!」
「ギャランドゥ♪」
西條と野口の合唱が始まった朝の9時前。はっきりとした頭で何度も左右を確認する。やっぱり…ここはまだ車内だ。パリピ会場じゃない。
そりゃあ朝からこれだけハジケていれば、アフター7は電池が切れるはずだ。いつも仕事の日の残業後は、私に「おんぶしてうちまで連れてって。」と言ってくる。(元気そう)
「一夜限りの♪恋でもいいさっ、」
「ギャランドゥ!ギャランドゥ〜♬」
「(死んだお婆ちゃんが喜びそう。)」
西城秀樹のアカペラをBGMに1時間以上走れば、本日の春闘大会会場であるグリーンバレーに着いた。
大人用アスレチックも楽しめるアクティビティが充実した施設。イチゴ狩りまで楽しめるのだ。
「成世は練乳派?そのまま派?」
車を降りるなり、突然、西條さんにそんなことを聞かれた。
「え?イチゴ狩りの話ですか?」
「あ。やっぱいいや。成世の趣向を知ったところでオカズにもネタにもなんないし。」
「序盤はそのまま、中盤から練乳つけて、フィニッシュでまたそのままに戻る派です。」
「晴天の午前にフィニッシュとか言うな。」



