マーガレット

「ふ、不敬だぞ!」

「不敬でも何でも構いません。今すぐ乗り帰ってください。この件は陛下に言おうが何をしようが構いませんので」

 護衛騎士に対し『殿下が倒れる前にお連れして』と伝えると、すぐに行動し二人を馬車へと押し込んだ。
 自分の身と殿下のことを考えたら正しい判断。

「す、すみませんマーガレット様」

「いえ。私の方こそ義妹がすみませんでした。この部屋は浄化まで終わらせたので他の所を手伝ってください」

「分かりました」

 とても丁寧な方。どこかの令嬢なのも一目見て分かるくらい動作に無駄がない。
 妹もあれくらい落ち着いてくれたらいいのに。

「うっ……」

 彼女を見送った後、他の患者にバレないよう廊下に出て人が居ないような場所まで移動する。

 やっぱり重症者を診た後に杖を使って本気を出すのはまずかったのか、ふらつき視界が歪んだ。一時的なものだとしても気持ち悪いことには変わりない。

『馬鹿者。調子に乗るからだ』

「……ヴァル」

 犬ではなく人の姿で現れたヴァルはふらつく私の体を簡単に持ち上げ、近くの部屋に入り適当な椅子に座るとそのまま膝の上に乗せ、後ろから抱きしめるように力を注ぐ。

『面倒だな。このまま逃げるか?』

「逃げてどうするの」

『お前にデカい態度を取ったあのガキに呪いを返して精霊界で遊んで暮らす』

「え? まだ呪い持ってるの? 何で?」

『人とは簡単に裏切る存在だ。もしもの可能性を少しでも持ち合わせているのならこちらも切り札を持つべきだろ?』

 とんでもない発言を楽しそうにするヴァルを怒る気にもならなかった。
 だって私の為って分かっているから。