マーガレット

「皇都の東の地域で病が流行しており、現在外に漏れないよう隔離している状態です。皇帝陛下は事態を早急に収めたいと仰っており、聖女様に置かれましては最高で五名の派遣をお願いいたします」

 師匠とお茶をした次の日、緊急招集がかかった。いつもの部屋で歴代の統括及び、師匠と皇宮聖女である私が集まった。

「病は感染力が高く、長時間自分自身を保護できるシールドを展開でき、同時進行で治癒が出来る方を選びたいと思います。これは強制ではないので断っていただいても結構ですが、国からはかなり報酬が出るとのことです」

「かなりとはどれくらいですか?」

 報酬が気になったのか統括の一人が質問し、陛下の言葉を伝えに来た騎士がそれに答える。

「一年間、必要経費を出すとのことでした。衣食住の費用はもちろん、薬を作るための薬草の手配や資金、他の貴族との交流を深める機会として皇族が開くパーティーへの参加権などなど。他にもご要望があればできる限りは協力するとのことでした」

 流行り病のために派遣されるからこれくらいの事はする、と陛下は仰ったみたい。この話を聞いて周りはざわざわと騒ぎ出し、ありがたい話にあちらこちらで立候補したいと聴こえてくる。

「はいはーい! 私行きたーい!」

「笑わせてくれるなリリアナ・リリア。治療も満足に出来ん奴がシールドを張りながら治癒できるとは思えんが?」

 この好条件に釣られて手をあげたのは我が妹、リリアナ。わざと困らせるようなことを言っているのか、それとも本気なのかは知らないけど危険性くらいは分かっていてほしい。

「何でそんな酷いんですか! 私だってやる時はやります!」

「ではシールドを自分自身に張ってください」

「え? 今?」

「はい。今です」

「今は無理。だってそれをやってくれるのはリシュライド様だもん」

 ――は?
 まさかこの子、病が流行している上に感染力が高い場所に病み上がりである第二皇子を連れて行こうとしているわけ? しかもシールドは殿下に任せる?

 彼は長年病と闘っていて魔法が使えない状態だと言うのは周知の事実。

「冗談ですよね?」

「なんで?」

 彼女の表情からは悪ぶれた様子もなく、皇子を連れて行ってはならない理由が分からないリリアナは、二人で乗り越えられないものはないと語りだした。

「ではリシュライド殿下が貴女を護っている間、殿下は誰がお守りするんですか?」

「えー? 騎士がいるじゃん」

 どうやって魔力もなく聖神力もない騎士が殿下を守るのよ。物理じゃどうにもならないってのに。

「却下で。ではこちらで三名選びます。今回は私が皇宮聖女として初めての出来事なので私も同行し、残りの一枠は立候補とします」

 その代わり私は報酬を頂かない件と明日には東に向かうことを伝え、話を進めた。
 この時は大人しかったリリアナが、まさかあんな行動に出るとは誰も予想できないまま。