カラフルハート

次の土曜日。

待ちに待った初デート!!

現在8時50分。

はやる気持ちを抑え・・・きれてはおりませんが、七瀬と洋服選び中です。

「これでいい?華凛」

「う〜ん・・・」

「もっと動きやすい方がいいんでしょ?」

「うん。・・・・・やっぱりわかる?」

「まぁ、私もそう思ったから・・・」

さすが七瀬、と言うべきか。

遊園地はやっぱり動きやすい方がいいけど、可愛さは捨てたくない。

完全意思疎通、一心一体のごとく、意見が揃いながらの服選び。

イメージはあるのに形にならず、部屋に「うーん…」と言う唸りだけが響く。

などど考え続けてもう既に30分。

勝負服?って難しいね?

そんなこんなで服が決まったのは9時20分。

選び始めて1時間後の事だった。

時間を見ながら進めたはずの時計は、無情にもいつの間にか1周していた。

結局選んだ服は、ウエストがゴムで絞ってあるタイプの膝上のワンピースと春用のピンクのカーディガン。

走りやすさと可愛さを両立しようとした結果、ほぼ走りやすさの概念を捨てることになった。

更に、ここから髪を結ぶ時間やアクセサリー選びもあるときた。

これは間に合わないかもしれない!!

しかも私は走るのだけが苦手で、50m走に13秒もかかる且つ体力が普通並の私には、待ち合わせギリギリの時間に出発だった。





「ヤバいヤバいヤバい!!!!! 本当に遅れる〜!!」

息を切らしながら駅に向かう。

心なしかいつもより、速く走れているはずなのに、いつまで経っても全然見えてこない駅が、果てしなく遠くに感じつつ息を切らしながら走る。

「お母さんに送ってもらえば良かった!!」

なんと今更な思いつき。

屋根が見えて来た時、絶望が希望に変わった気がして、全速力で走ったけど、待ち合わせギリギリだったせいか、もう既に谷中くんは到着していた。

「谷中くん!!ごめんね、待った?」

「ううん。今来たとこ。華凛時間ピッタリに来たね」

絶対待たせたやつじゃん・・・!!

恥ずかしい〜!!申し訳ない!!

「ごめんね、ギリギリに出ちゃったから・・・。もっと早く出れば良かった」

「大丈夫。走ってたから疲れたでしょ?お疲れ様」

笑顔で頭ポンポンしてくれた。

・・・王子??? あっ学年の王子でした。

ファンクラブまであるとか・・・・・。これは、できるのも納得。

そんなこんなで、電車に無事乗り込み楽しく談笑・・・のはずが・・・。

「華凛の行きたいカフェ遊園地の近くで助かったね」

「うん」

「華凛すごく行きたがってたもんね」

「うん」

「楽しみだね」

「うん」

緊張し過ぎてうんで会話即終了させてます。

おそらく笑顔も引きつっていることだろう。

どうしよう・・・何話そう・・・。

どうにかして挽回せねば・・・。

そういえば・・・。

「谷中くんって遊園地好きなの?」

これなら長続きする話題のはず!!

「盗み聞きになっちゃったんだけど、付き合う前に華凛と石井さんが遊園地好きって言ってて・・・。それで喜んでくれるかなって・・・思いました」

なぜ語尾敬語?

にしても。

「私そんな話したっけ?でも確かに遊園地は好き。特に絶叫系。覚えててくれてありがとう」

「前も絶叫系が楽しいって言ってたよ」

・・・・・・。

「記憶力すごっ!!」

思わず声が大きくなりかけて、手で口を覆う。

「そっち? 引かれちゃうかと思ったんだけど・・・」

「引かないよ!!すごいもん。他に覚えてくれてることとかあるの?」

「弟がいて名前はあさひ」

「あってる!!」

「華凛、関心するとこじゃないよ。これ全部盗み聞きだから・・・」

「私は些細な事まで覚えててくれて嬉しい」

それに谷中くんのこと少しは知れたし。
私の心は、今日の青空の如く澄み切っております。







無事遊園地の最寄り駅に到着。

「こっから詳しくルート決めなかったけど、どうする? 華凛のリクエストは、行き当たりばったりってことだけど・・・華凛の好きにしていいよ」

「いいの?・・・だったらお揃いのもの買いたいかな」

「・・・華凛好きな物教えて?」

また急な質問だなぁ。

そういえば、谷中くんに言ったことなかったかも。

「ぬいぐるみ・・・。くまさんのモフモフしてるやつ」

モフモフと言う言葉に合わせて、思わず手をモフモフと動かす。

「じゃあぬいぐるみ風キーホルダーのペアルックっていうのはどう?」

まぁ自分の顔を鏡見なくても、おそらく漫画で花が周りに咲くような笑顔を浮かべていただろう。

「大!!賛!!成!!」

足を弾ませながら、近くの雑貨屋さんに入った。

ブリッシュレトロで、木製床の店内の匂いが、どこか新鮮さを感じさせながら、コップや皿などの日用雑貨を横目に、キーホルダーコーナーへと向かい、お目当てを見つける。

色やデザインに悩まされながら、買い物をし終えると11時50分になっていた。

「可愛いのがたくさんあって迷っちゃったね」と笑顔で語りかけてくれる谷中くんにリードされ、カフェに向かった。





「・・・でねっ!!その足を挫いた時も七瀬が助けてくれたの!! 七瀬って、力持ちで私をお姫様抱っこしてくれて〜、えへへ、保健室に運んでくれたんだよ〜 七瀬のこと王子様にしか見えなくて、めっちゃかっこよかったんだぁ〜!!」

カフェで話に一区切りつくと谷中くんがクスッと笑う。

「笑うとこあった?」

ふとした疑問を、首を傾げながら聞くと

「だって華凛さっきから、石井さんのことしか言ってないよ? しかも言う度に七瀬が、七瀬が〜!!って目キラキラさせて。そこが可愛らしくて。年上の幼なじみのことも教えて?」

自分が客観視できてなかったとはいえ、恥ずかしさで顔が染まるのが、徐々に上がる顔の熱でわかる。

それでも、バカにせずに居てくれる谷中くんの優しさに、居心地の良さを覚える。

「純一のこと?あいつのことはいいの!死ぬ程友達に愚痴ってきたから。今更話したくない!!」

と分かりやすく頬を膨らませながら拗ねると、谷中くんの教えて?の時にくらった上目遣いに、更に顔が熱くなるのを感じた。

顔、りんごみたいになってないかな?

「その愚痴聞いてくれてたのも石井さんでしょ?」

「あっわかる?」

「うん。さっきから石井さんばっかりだからね。僕も華凛の王子様になれば夢中になって話してくれる?」

普段は見ない妖艶な目が私を捕らえる。

と共に私の顔の温度が更に、一気に上がる。

顔、あっつい!!

春の小春日和な晴れの日にも関わらず、顔の周りの空気が、冷たくて程よいくらいだ。

「急に王子様になられても近づきにくいよ〜」

笑顔でかわそうと言ってみるけど顔が赤いのは誤魔化せなくて・・・。

「でも石井さんは平気でしょ?」

「それは親友だから・・・」

「じゃあ僕は親友以下なんだ?」

「そんなわけないよ!! もちろん七瀬のことは凄く大切だけど、谷中くんはもっと大切!! 彼氏なんだから!!」

・・・・・私とんでもなく恥ずかしいこと言わなかった?!

顔から火がでる!!

恥ずかし過ぎて穴があったら入りたい!!

いや、むしろそのまま、その穴埋めてくれ!!

誰か!!墓穴(はかあな)掘る手伝いお願い!!

いや墓穴なら今自分で掘ったんだよ!!

誰か墓石持ってきて!!

穴に入ったあと綺麗に埋めて、墓石に諸々掘ってこの一連の流れをなかった事にして欲しい!!

そんな心の声が忙しい私を他所に、谷中くんは余裕の笑みを浮かべ、私の頭を撫でながらありがとうって言う。

「・・・わざとでしょ?」

「バレた?・・・ってそんなに怒らないで?」

「別に怒ってないもん。恥ずかしくて・・・」

本当に顔が熱い。

谷中くんに見せられない。

思わず顔を逸らす。

「ごめんごめん。ちょっと不安になっちゃって。でもちゃんと大切に思ってくれてるみたいで良かった」

そう安心そうに笑う彼を見ていると、憎めなくなってきた。

そして気づいた。

不安になるのって女の子たけじゃないんだってこと。

クラスメイトや友達の話聞いてて、女の子が不安になるのは想像ついてた。

でも男の子が不安になるなんて、なかなか想像つかなくて・・・。

谷中くんのことも知れた気がしたし、良かったかもしれない。




「そろそろ遊園地行こうか」

今は・・・1時か。

「そうだね、楽しみだなぁ〜」

雑貨屋さんに行った時以上に、足が弾む。

というか弾ませている。

しばらく進んで気づいたが、喜びを抑えられずスキップしていたようだ。

そんな私を、バカにするでも冷やかすでもなく、嬉しそうに谷中くんが見つめていた。





そうして、谷中くんのことを沢山知りながら、デートという天国は、夕日のオレンジ色に染まりながら、そして、そのオレンジ色に染める太陽は、雲と建物に沈みながら、幕を閉じたのだった。