重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


【星野昊・行動記録(非公式)】
JSEA非公式記録ログ:2026年3月16日
観察対象:結月(仮妻)
記録者:星野 昊(宇宙飛行士・第3次長期滞在帰還者)

【時刻:09:12】
当方、再適応訓練および健康観察を完了。
→ 地上生活への復帰許可を受領。
→ 自宅へ帰還。
→ 玄関にて、対象の声による出迎えを受ける。
→ 声のトーン:安定。表情:やや硬直。
→ 対象の心理的距離感の増加を確認。

【時刻:09:18】
当方、契約終了を提案。
→ 対象、即座に了承。
→ 表情:微笑。瞳孔収縮、口角の揺らぎあり。
→ 対象の“納得”と“諦念”の混在を確認。
→ 当方、胸部に圧迫感。原因:発言内容と対象の反応の乖離。

【時刻:09:24】
対象、荷物を持ち出し実家へ帰還。
→ 振り返り時の発言:「夢が叶う瞬間を見届けられて、よかったです」
→ 当方、返答不能。
→ 対象の言葉に含まれる“祝福”と“別れ”の二重構造により、思考処理一時停止。

【時刻:数日後 13:42】
当方、自宅にて対象の不在を再確認。
→ 焼き菓子未開封。摂取を躊躇。
→ ノート発見。最終ページに「帰ってきたら、ちゃんと話しましょう」の記述。
→ 文字の滲み=涙痕の可能性。
→ 当方、感情的反応:中程度。
→ 発言:「……まだ、話していない」

【時刻:14:10】
妹・美羽、訪問。
→ 指輪受領。
→ 発言:「ちゃんとプロポーズ、したの?」
→ 当方、沈黙。
→ 美羽:「けじめ、つけなよ」
→ 発言内容が当方の行動決定に与えた影響:大。
→ 行動計画変更:対象実家への訪問を決定。

【時刻:16:40】
対象実家に到着。
→ 菓子折り携行。指輪は内ポケットに収納。
→ 父親との対話において、謝罪および誠意の提示を実施。
→ 発言:「死も覚悟のうえで地球を発ちましたが、ここへ来る方が覚悟が要りました」
→ 父親の反応:沈黙→警告→許可。
→ 対象との面会許可を得る。

【時刻:17:10】
対象の部屋前にて深呼吸。
→ ノック後、入室。
→ 室内環境:整頓・柔和・対象の個性が反映された空間。
→ 対象の表情:驚き→微笑。
→ 当方、膝をつき、想いを告白。
→ 発言:「君が好きだ。契約じゃなく、人生を共にしたい」
→ 指輪贈呈。対象、受領。
→ 対象の反応:涙+笑顔。
→ 当方、心拍数上昇(推定:+12bpm)
→ 対象の左手に指輪を装着。サイズ適合率:100%
→ 対象の睫毛に涙を確認。指先で拭う。
→ 対象、瞼を閉じる。
→ 当方、口づけを実施(初)。
→ 接触時間:約2.4秒。
→ 両者、表情:照れ+幸福感。
→ 発言:「続きは、マンションに帰ってからでもいいでしょうか?」
→ 対象:「……はい」と返答。
→ 当方、精神安定度:急上昇。幸福感指数:過去最高値を記録。

補足観察メモ(非公式)
・対象の存在が、当方の“帰還地点”として心理的に定着。
・“契約”という前提が消失し、関係性の再構築が完了。
・対象の笑顔および涙に対する当方の生理的反応は依然として顕著。
・初の口づけにより、対象との心理的距離が完全に消失。
・当方の感情表現における“理論的”枠組みの再定義が必要。
→ 今後の生活における“重力”の中心は、対象であると結論。

次回行動案:
・新生活に向けた生活環境の再設計
・対象の希望を反映した家事分担表の作成
・“叱られリストVer.1.0”の初期構築
・“続き”に関する段階的進行計画の策定

——以上。