「……叱りますよ?」
「それがいい。君の声が、俺の重力だから」
「……またそれ言うんですね」
「あぁ。何度でも言うよ」
昊は、ジャケットの内ポケットから小さな箱を取り出す。
そっと開くと、中にはシンプルなプラチナのリングが輝いていた。
「宇宙で設計し、地球で完成させた。これは、君のための指輪だ」
結月は、目元を潤ませながら、笑みが零れ出す。
「……ずるいなぁ、そういうとこ」
「……それ、褒めてる?」
「うん。最高に」
昊は、結月の左手をそっと取り、薬指にリングを通す。
ぴたりと収まったその指輪は、まるで最初からそこにあるべきだったかのように輝きを放つ。
(やっと渡せた。女性に物をプレゼントするのが生まれて初めてだったから、もの凄く緊張したけど、……君に贈るために、僕は『恋』を知らなかったんだと思う……)
「……これからは、ちゃんと隣にいて下さいね」
「もちろん。君の隣が、俺の帰還地点だから」
(この人となら、どんな困難も楽しさに塗り替えられると思う……)
自然と絡み合う視線。
結月の睫毛が僅かに濡れていて、昊はそっと指先で拭う。
結月は身を委ねるように、そっと瞼を閉じた。
それが合図となり、昊は優しく触れるだけのキスをした。
「……あの、最適解……だったでしょうか?」
「へ? ……フフッ、どうでしょう?」
昊は、今のがファーストキスだった。
恋に奥手の男が、一大決心とばかりに妻に口づけしたのだが、それが正しいのかも分からない。
「ご自分で、最適解を見極めては……?」
結月の言葉に、昊は目を見開いた。
許可もなく口づけしてしまったことを謝った方がいいのか考えていたので、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「では……続きは、マンションに帰ってからでもいいでしょうか?」
「ッ?! ……はい」
真顔で尋ねる昊に、結月は心臓を跳ねらせながら、笑みを返した。
昊は視線をぐるりと泳がせたのち、両腕で優しく抱きしめた。
「今はこれが最適解です」
「……フフッ、はい」



