結月の部屋の前で、昊は一度深呼吸をした。
ノックをしようとした手が、僅かに震える。
けれど、もう迷いはなかった。
ドアを三回ノックし、「結月さん」と声をかけた。
「……どうぞ」
中から聞こえた声に、昊はそっとドアを開けた。
ホワイトウォーク調の家具に囲まれた、明るく整った部屋。
ベッドには淡いピンクの花柄カバーが掛けられていて、どこか春の陽だまりのような温もりがある。
出窓には小さな観葉植物と、手のひらサイズのガラス細工が並んでいた。
どれも、結月が少しずつ集めて来たもの。
カーテン越しの柔らかな陽ざしが、彼女の横顔をそっと包んでいた。
「何か、話したいことでも……?」
「うん。……君に伝えたいことがある」
昊は結月の前まで歩み寄り、ゆっくりと膝をついた。
昊は真っすぐと結月を見つめて、静かに口を開く。
「俺は、君が好きだ。契約じゃなく、人生を共にしたい」
結月は驚いたように目を見開いた後、ふっと微笑んだ。



