「……まぁ、昊さん、お忙しいのにわざわざ……。外は寒いでしょうから、上がって下さい。お父さん、玄関先で何をしてるんですか。ご近所迷惑になりますから」
「……仕方あるまい。入りなさい」
「ありがとうございます」
リビングに通された昊は、ソファには座らず、床に正座した。
そして、結月の両親に向かい、深々と頭を下げた。
「この度は、結月さんをこちらに帰らせてしまい、大変申し訳ありませんでした」
母親は昊の誠実な言葉に小さく安堵の溜息を漏らす。
父親はまだ納得がいかないといった表情で腕組をしたまま。
「よくのこのこと来れたもんだな」
「死も覚悟のうえで地球を発った私ですが、ここへ来ることの方が覚悟が要りました」
「結婚の挨拶に来た際に、君に伝えたはずだ。――娘を泣かせたら、成層圏どころかマントルの奥深くに埋めるからと」
「……はい、覚えています」
「君が日々大変な訓練をして、漸く夢を叶えたということは理解できるが、娘を蔑ろにすることとは別問題だ」
「……はい、仰る通りです」
「夢と娘を天秤にかけろとは言わない。男にとって、家族を養うことの大事さは私でも分かるから。だが、夢を追い求めすぎて、家族の大切さを忘れる奴に、娘は預けれんぞ」
「……はい、ごもっともです」
昊は膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめて、父親の言葉を噛みしめていた。
契約結婚は宇宙へ行くための手段だったため、帰還した後のことまで深く考えていなかったのだ。
まさか、こんなにも……心が軋むほど、想いが募るとは思いもしなかったから……。



