重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


 日が傾きかけた頃、昊は結月の実家の前に立っていた。
 手には丁寧に包まれた菓子折り。
 そして、ジャケットの内ポケットには、小さなリングの箱がしまわれている。
 宇宙で設計し、地球で完成させたその指輪は、まだ言葉にできていない想いと共に、静かに彼の胸元にあった。

 インターホンを押す指先が、僅かに震えた。
 宇宙空間での作業よりも、今の方がよほど緊張している。

 チャイム音が鳴り、暫くして玄関の扉が開いた。

「……君か」

 現れたのは結月の父・豊だった。
 竦められ、昊は一瞬だけたじろぐ。

「結月さんに、お会いしたくて……。これ、お口に合うか分かりませんが……」

 昊は持参した菓子折りを結月の父に差し出す。
 すると、そんな昊の行動をじっと見つめたまま、物言いたげな表情を浮かべている。

「国民的英雄になったら、家族は二の次か?」
「……ご挨拶が遅くなり、大変申し訳ありません」

 深く頭を下げる昊に、父親は無言のまま見据えている。
 そこへ、結月の母親が現れた。