「……何だ、美羽か」
妹の美羽が、不機嫌そうな顔で立っていた。
手には、小さな箱が握られている。
「はい、これ。お兄ちゃんに頼まれて、今日工房から受け取ってきたやつ」
「……ありがとう、助かったよ」
昊は両手で箱を受け取った。
箱の中には、宇宙で設計したリングの完成品が静かに輝いている。
「……ちゃんとプロポーズ、したの?」
昊は言葉に詰まる。
プロポーズどころか、最初から契約結婚を申し入れしたのだから。
「任務があって、電撃結婚になったのは分かるけど、挙式もしてないし、新婚旅行も行ってないでしょ。お兄ちゃんのことだから、ちゃんと気持ちも伝えてないんじゃない?」
「……」
「だからこうして……、無事に帰還したら指輪を渡そうと思ってたんでしょ?」
美羽の言葉に胸が締め付けられた。
契約結婚だから、形だけなのは当たり前だが、本当に夫婦らしいことを何一つしてあげれなかったことに気づく。
「今からでも遅くないよ。……ちゃんと素直な気持ちを伝えて、大事にしなよ? あんな可愛い奥さん、地球上でも宇宙でもいないんだからね!」
「……分かってるよ」
「じゃあ、帰るね。結月さんに宜しく~」
美羽は結月がカフェのバイトで不在だと思ったのか、部屋に上がらずに帰って行った。
昊は手の中の箱を大事に包み込む。
――迷いは、もうなかった。



