重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


 その言葉に、昊の指が止まる。
 文字が滲んでいた。
 何かで濡れて滲んだとしか思えないその文字に、昊は胸の奥からぐっとこみ上げるものを感じた。

 結月は待っていたのだ。
 契約の終わりではなく、その先の“何か”を――。

 昊はノートを胸に抱きしめるようにして、目を閉じた。
 宇宙では感じなかった重力が、今胸の奥にずしりとのしかかる。

「……まだ、話していない」

 その呟きは自分自身への問いかけだった。
 伝えるべき言葉を伝えないまま終わらせていいのか。
 結月の笑顔をあのまま手放していいのか。

 その時、玄関のチャイムが鳴った。
 昊は、勢いよく顔を上げる。

「……結月?」

 思わず口をついて出たその名に、昊は驚く。
 心のどこかで『もしかしたら……』と願っていたのかもしれない。

 玄関ドアを開けると、そこに立っていたのは――