重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


 突然、何も言わずに実家へ戻ってきた娘。
 けれど母は、問い詰めることなく、ただその様子を見て全てを悟った。
 “いろいろあったのね”とそう言うように、そっと娘に寄り添う。

「……好きだったんだなぁ、私」

 言葉と共に、目尻からあたたかい雫が零れ落ちる。
 母は何も言わず、そっと娘を抱きしめた。


 テレビの中で、昊が記者の質問に答えていた。

「……個人的なことですが、地球に戻って最初に飲んだコーヒーが、少し薄く感じました。でもそれが、『地球の味』なんだと思います。……懐かしくて、嬉しかったです」

 その言葉に結月は思わず笑ってしまった。
(あぁやっぱりこの人は、どこまでいっても不器用で、真面目で優しい)

 画面の中の昊が、ふとカメラに視線を向けた。
 その視線が自分に向けられたような気がして、結月は思わず目を閉じた。

(……もう、会えないかもしれない。それでも……)

 胸の奥に確かな想いが残っていた。
 それは、契約ではなくもっと深くて、もっとあたたかいもの――。