重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


 実家のリビングには、テレビの音だけが静かに流れていた。
 画面には、JSEAの記者会見の様子が映し出されている。
 中央に立つのは、星野昊。
 帰還後初の公式会見で、彼は淡々と任務の成果を語っていた。

「……今回のミッションでは、通信衛星の軌道修正と、船内環境の長期安定化に成功しました。全ては地上のサポートと、チームの協力があってこそです」

 その声は変わらず冷静で、理路整然としていた。
 けれど、結月には分かる。
 その言葉の端々に、ほんの少しだけ柔らかさが混じっていることを。

 昊の隣にいた時間が、確かにあった。
 それを思い出す度に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「……本当に凄い人ね、昊さんって」

 隣でテレビを見ていた母が、ぽつりと呟いた。
 結月は何も言わずに画面を見つめ続ける。

「でも、結月が彼の話をする時、本当に楽しそうだったよ」

 母の言葉に、結月は静かに瞼を閉じた。
 膝の上に置いた手に、母の手が優しく重なった。