重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


「この前は……ごめんなさい。あんな言い方、するべきじゃなかったわ」
「え……」

 結月は驚いて、思わず香織の顔を見据えた。

「私、ずっと彼のそばにいたから、彼のことを一番分かってるつもりだった。でも……この前、彼の通信を見て、気づいたの。あの人、あなたの話をする時だけ、表情が変わるの。……あんな顔、初めて見た」

 香織の声は穏やかだった。
 けれど、その言葉には確かな想いが込められている気がした。

「あなたでよかった。……今はそう思えるわ」

 結月は、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
 香織の言葉は、真っすぐに心に届いていた。

「……ありがとうございます」

 それだけを絞り出すように言うと、香織はふっと微笑んだ。

「私、漸く分かったの。彼が見ているのは、未来じゃなくて、“今”を一緒に生きてくれる人なんだって。だから、私も前を向こうと思う。……彼の隣じゃなく、自分の道を、ね」

 その言葉に、結月はそっと頷いた。

「私も……最近気づきました。昊さんのことを考えると、胸が苦しくなるのは、不安だからじゃなくて……好きだからなんだって」

 香織はどこか安心したように微笑んだ。