重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


「君の声を聞く度に、俺は“帰る場所”を思い出します。それが、どれほど大きな意味を持つのか……今、漸く分かった気がします」

 言い終えると、昊は録音を停止し、暫く無言のまま画面を見つめていた。
 やがて、ふっと小さく笑う。

「……これ、惚気に聞こえるんでしょうか」

 誰にともなく呟いたその声は、無重力の空間に溶けていった。



 一方、地上のカフェ・ルミエール。
 閉店後の静かな店内で結月は一人、録音データを再生していた。

 昊の声が、スピーカーから静かに流れ出す。
 その声はいつもより少しだけ柔らかくて、近くに感じられた。

「……君の声がないと、地球の音が思い出せない」

 その一言に、思わず吹き出しそうになって、でもすぐに目頭が熱くなるのを感じた。

「……ほんと、もう……」

 結月は静かに目を閉じた。
 彼の声が胸の奥に甘く響く。

 遠く離れているのに、こんなにも近く感じる。
 それは、彼が『心』を届けてくれたからだと、結月は気づいていた。