「え、何で?」
「だって、昊さんって、すごく立派な人で……。宇宙飛行士だし、頭も良くて真面目でちゃんとしてて……。私なんか、ただのカフェ店員で、夜間の製菓学校に通ってる途中だし、何をするにも中途半端だし……」
言葉を重ねるうちに、声が小さくなっていく。
陽翔は暫く黙っていたが、やがて、ゆっくりと口を開いた。
「でもさ。あの人、君の話するとき、ちょっとだけ耳が赤くなるよね」
「……あ」
結月は、ふとした瞬間に昊の耳が赤くなっているのを思い出す。
普段は無口だし、ほぼ無表情の昊だが、時折見せる照れた仕草が可愛らしいと思えるのだ。
「普段は顔色ひとつ変えない人なのにさ、あれ見た時、“ああ、この人、本当に結月ちゃんのこと、大事に思ってるんだな”って思ったよ」
結月は昊との会話を思い出した。
“君の声は、俺の重力だから”と、照れもせずに言ったあの夜のこと。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
「……三浦さんが見ても分かるくらい、赤くなってたんですね」
「うん。あれは、嘘つけないサインだよ」
陽翔はにっこりと笑った。
「結月ちゃんは自分のことを『私なんか』ってすぐに言うけど、ちゃんと見てくれている人はいるからね。その人のためにも、『私なんか』なんて言っちゃだめだよ」
「……っ」
優しい口調の陽翔の言葉に、すっかり口癖になっているのだと気づく。
「三浦さん、いつもありがとうございます」
「ん? 俺は何もしてないけど……?」
気を使わないで話せる唯一の常連客。
陽翔の優しい人柄に救われた気がした。



