カフェ・ルミエールの午後は、穏やかな空気に包まれている。
結月は焼きあがった焼き菓子をショーケースに並べていると、
「結月ちゃん、何かあった? 最近、浮かない顔してるけど」
声をかけてきたのは、常連客の陽翔だった。
「お代わりちょうだい」と空のカップを結月に差し出して来た。
結月はそのカップにブレンドコーヒーを注ぐ。
「いつもと変わらないですよ」
結月は微笑んでみせたが、陽翔はじっと彼女を見つめたまま、静かに口を開く。
「……嘘つく時、瞬きの回数が増えるの、知ってる?」
「えっ、嘘……」
「今、三回した」
「……うわ、やだ、観察されてる……!」
結月は思わず顔を両手で覆った。
陽翔はくすっと笑いながら、結月の頭を優しくポンと撫でる。
「でも、まあ……分かるよ。会いに行ける距離じゃないし、安全とは言い難い場所だしね」
「……」
結月は、陽翔が言葉を選びながら励ましてくれているのが分かる。
昊が毎日のように足しげくカフェに通っていたのを、陽翔に気づかれていたのだ。
その後、二人が籍を入れたと聞き、陽翔が驚愕したのが昨日のことのようだ。
「昨日、衛星通信の動画をテレビで見たけど、本当に別世界の人だもんね。俺ですら、ちょっと心配になったりするんだから、結月ちゃんじゃ、不安も尽きないよね」
「はい。二か月半の滞在予定だから、まだ二か月以上もあるので……」
「そっか。……寂しい?」
結月は少しだけ考えてから、ぽつりと答えた。
「……私なんかが、あの人の奥さんでいいのかなって、たまに思うんです」
陽翔は驚いたように目を見開いた。



