数時間後。
昊は、船内の個室に一人でいた。
無重力の中、浮かぶようにして手元の端末を操作する。
ボイスレコーダーを再生すると、結月の声がふわりと響いた。
『……今日の空は、ちょっと曇ってました。でもなんか、ちょっとだけ広く感じました。あの空の向こうに、昊さんがいるのだと思うと……』
昊は目を閉じた。
無音の宇宙に、彼女の声だけが優しく響く。
再生が終わると、昊は無意識に再び再生ボタンを押した。
何度も、何度も。
*
一方その頃、結月は昊の部屋にいた。
ふと、彼の部屋のドアを開けてしまったのだ。
整然とした空間。
机の上には彼が使っていたノートと、整然と並んだ文具。
そして、あの“話題リスト”の下書きと思われる紙が、そっと置かれていた。
結月はそれを手に取り、紙に視線を落とす。
そこには、自分が話した何気ない話題が、丁寧な文字で記されていた。
「……本当に、観察されてたのね」
思わず笑いながら、彼女は紙を胸に抱きしめた。
(……私、何してるんだろう)
その問いに、答えはない。
けれど昊の言葉が、結月の中に確かに残っていた。



