重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


「参考までに、“叱りたいこと”って項目も入れてあります」
「……ぶっ!」
「君が俺を叱る時、声のトーンが0.7オクターブ上がる。あれを聞くと、何故か落ち着くんです」
「……それ、褒めてます?」
「はい。君の声は、俺の重力だから」

 結月は笑いながらも、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
 この人は、こんな風にしか気持ちを伝えられないのかもしれない。
 でも、それでもいいと思えた。

「……私もリストに候補、書いていいですか?」
「もちろんです」

 結月はノートの最後のページに、そっと一言だけ書き加えた。
――“帰ってきたら、ちゃんと話しましょう。”
 昊はそれを見て、少しだけ目を見開いた。

「……了解です」

 結月は口元を緩めながら、彼の性格が滲む文字にそっと指を這わせた。

「昊さん、いってらっしゃい。無事に、帰って来て下さいね」
「……必ず」

 二人はそれ以上何も言わず、静かに見つめ合った。
 けれどその沈黙の中には、言葉よりも確かな想いがあった。

(……これが、最後になるかもしれない)
 結月は、心の奥でそっと呟いた。
 言葉にはしなかったけれど、胸の奥に小さな不安が芽生えていた。