その夜。
「……重力のせい、って言ったんですか?」
夕食後、ソファでくつろいでいた結月は、日中の話を聞いて、思わず吹き出した。
「はい。事実です」
「いやいやいや、どんな言い訳ですかそれ……!」
「弁当箱の構造に問題がある可能性も考慮すべきです」
「はいはい、理論的ですね」
結月は笑いながら、昊の顔をじっと見つめた。
「でも……ありがとうございます。持って行ってくれて、嬉しかったです」
「……こちらこそ。とても美味しかったです」
「えっ、今……褒めました?」
「……事実を述べただけです」
「ふふっ、もう、そればっかり」
二人の間にあたたかな空気が流れる。
例え、卵焼きがフタに張り付いていても——。
そのお弁当は確かに“愛妻弁当”だった。



