「星野さん、普段は本当に無口で……でも、最近ちょっと変わったんですよ。なんだか、よく笑うようになったというか。ね?」
香織が他のスタッフに尋ねる。
「……そうですね。以前より、表情が柔らかくなった気がします」
「ふふ、やっぱり奥様の影響かしら。……あ、でも、プレッシャーに感じないでくださいね? 私たち、星野さんのこと、長く見てきたから。ちょっと気になってしまうだけなので」
「……はい」
笑顔のままじりじりと距離を詰めてくる香織に、結月は内心たじろいだ。
(場違いなところに来てしちゃったかも……)
結月が小さく溜息を吐いた、その時。
「彼女は、俺の誇りです」
会議室の入り口から、昊の声が響いた。
「昊さん……」
「彼女は努力家で、誠実で優しい。俺にとって、かけがえのない存在です。……遅くなりました」
静まり返る会議室。
香織の笑顔が、ほんの一瞬だけ揺らいだ。
結月は顔が熱くなるのを感じながら、そっと隣に来た昊の顔を仰ぎ見た。
彼はいつものように無表情だけれど、その言葉には確かな優しさが込められている。
「……ありがとうございます」
小さく呟いたその声は、昊に届いたかどうかはわからない。
けれど、彼の耳がほんのり赤く染まっているのを見て、結月はそっと微笑んだ。



