重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


「っ……!」
「……触っては、だめでしたか?」
「……いえ。びっくりしただけです」
「結月さんの髪はふわふわしてて、無重力状態みたいです」
「それ、心地いいという意味ですか?」
「事実を述べました」
「……フフ、もう…」

 暫く、二人の間に優しい風が流れる。
 昊は、結月から漂うシャンプーの香りに胸の奥がそわそわするのを感じていた。


 やがて、昊がぽつりと呟く。

「宇宙は、孤独です。でも——あなたがいると、地球に帰る理由ができます」

 結月は、思わず彼の顔を仰ぎ見た。
 昊は星を見上げたまま、表情を変えない。

「……それ、プロポーズのつもりですか?」
「違います。これは、事実の報告です」
「……はいはい、理論的ですね」

 二人の間にふっと笑いが零れた。
 夜風がまたそっとカーテンを揺らす。


 まだ“好き”とは言えない。
 けれど、確かにこの胸の奥で、何かが静かに回り始めている。
 まるで二人だけの軌道が、ゆっくりと描かれ始めたように——。