風邪が治って数日後の午後。
カフェのバイトも、製菓学校も休みの今日は、久しぶりにゆっくりできる一日だ。
結月はふとした気まぐれで、昊の部屋の掃除に取りかかった。
普段はあまり立ち入らない場所。
けれど、彼のことをもっと知りたい——そんな気持ちが、自然と足を向かわせた。
本棚には宇宙関連の書籍や写真集がずらりと並んでいた。
無重力下での訓練風景、OASISの内部、星雲の写真。
そのどれもが、彼の“本気”を物語っている。
(※OASIS:Orbital Advanced Station for International Science(国際宇宙ステーション))
「……すごいな」
思わず、ぽつりと声が漏れる。
(この部屋には、彼の夢が詰まっている。無口で理屈っぽくて、感情が読みにくい人だけど——。その分、言葉よりも行動で、想いを伝えようとしてくれる人だ)
*
その日の夕方。
夕飯の支度をしようと冷蔵庫を開けた結月は、思わず眉をひそめた。
「……あれ? ケーキ、なくなってる……?」
昨日の夜、確かに残しておいたはずの試作ケーキが、影も形もない。
(学校で作ったものを持ち帰っては、少しずつ食べていたのに……)
「まさか、食べた……?」
その時、ちょうどリビングドアが開いた。



