重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


「だっ、……大丈夫です。自分で食べられます」
「そうですか」

 ベッドから上体を起こした結月の目の前に現れたのは、小さなガラスの器。
 中には、シャリシャリとしたシャーベット状のものが盛られていた。
 昊は当然のように結月の口へとスプーンで運ぼうとして、すかさず結月がそれを止めた。

「……これ、何ですか?」
「桃のシャーベットです。水分と糖分の補給になります」
「……何でそんなの作れるんですか?」
「同僚のお子さんが熱を出した時、かき氷機がなくて、すりおろし器で冷凍いちごを削ったと聞いたので。なので、数年前にかき氷機を購入しました。あると、本当に便利ですね」
「……準備が完璧すぎて、逆に怖いです」
「備えは、任務の基本ですから」
「はいはい、理論的ですね……」

 結月はスプーンを手に取り、桃のシャーベットを口に運んだ。
 ひんやりとした甘さが、火照った身体にじんわりと沁みていく。

「……おいしい。なんか、すごく沁みます」

 昊は何も言わず、ただ静かに頷いた。
 けれどその耳が、ほんのり赤くなっているのを結月は見逃さなかった。