重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


 目を開けた瞬間、世界がぐらりと揺れた。

「……ん……?」

(……そういえば。昨日は寒気がしてたのに無理して居残り練習して、課題をこなして。やっとの思いで帰宅して——その後、どうしたんだっけ?)

 結月はぼんやりとした頭で天井を見上げた。
 喉が焼けるように痛い。
 身体は鉛のように重く、額にはひんやりとした感触。

「……ん?」

 視界の端に、人の気配を感じた。

「起きましたか?」
「……昊さん」

 彼は冷却シートの箱と体温計を手にして、結月の顔を覗き込んで来た。

「熱、まだ下がっていませんね。三十八度五分です。冷却シートを貼り替えます。少し冷たいですよ」

 昊の指先が結月の額に触れた瞬間、ひんやりとした感触が心地よくて、結月は思わず目を細めた。

「……気持ちいい……」

 そのまま昊の手をそっと掴んで、自分の頬にすり寄せる。

「っ……!」

 昊の動きが止まった。
 心拍数が跳ね上がるのが、自分でも分かる。
(……これは、想定外だ)

 結月は熱にうなされているせいか、昊の手を離そうとしない。
 頬ずりしていた昊の手を首筋に当て、結月は気持ちよさそうにしている。

「んっ……!」

 昊は顔を逸らしながら、暫く結月のしたいようにさせた。
(熱がある時は、手を冷やしてから介抱するのがよさそうです)