重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


「……宇宙飛行士って、地上でも訓練してるんですね」
「習慣は、精神の安定に寄与します」
「はいはい、理論的ですね」

 結月は思わず笑ってしまった。
(この人と暮らすの、大変そう……でも、ちょっと楽しいかもしれない)

「荷物、どこに置けばいいですか?」
「こちらへ」

 昊が案内したのは、リビングの隣にある一室。
 シンプルな内装にベッドと机、クローゼットが備え付けられている。

「ここが君の部屋です。生活空間は分けた方が互いにストレスが少ないと判断しました」
「……ありがとうございます。気遣い、感謝します」
「いえ。合理的な判断です」
「はいはい、理論的ですね」

 結月は荷物を置きながら、ふと部屋の隅に目をやった。
 そこには、『生活ルール一覧』と書かれたホワイトボードが立てかけられていた。

「……なにこれ」
「生活の円滑な運営のために、ルールを可視化しました。朝食は七時、洗濯は隔日、ゴミ出しは僕が担当します。お風呂は交代制で、使用後は排水溝の掃除をお願いします」
「……はいはい、理論的ですね……三回目」
「回数をカウントする必要はありません」
「ツッコむところは、そこじゃないです」

 結月は思わず笑ってしまった。
(この人との生活は、きっと予想外の連続だ。でも、悪くない。少なくとも、前の誰かといた時より、ずっと楽しい)

「では、荷解きしますね」
「了解。必要なものがあれば、遠慮なく」
「はい。……あ、あとで冷蔵庫の使い方、教えてくださいね。あれ、たぶん私、怒られるやつです」
「……怒りません。説明はしますけど」
「ふふ、よろしくお願いします。ルームメイトさん」
「……地上支援パートナーです」
「はいはい、理論的ですね(四回目)」