「……ここが、私の新しい家かぁ」
結月は昊の自宅であるマンションの前で立ち止まり、深く息を吐いた。
「ここまでの道順、覚えましたか?」
「……はい」
結月が頷くと昊も頷き、マンションのエントランスの中へと歩み出した。
外観はシンプルで無機質。
無駄がなく、整然としていて、どこか宇宙船の船体を思わせる。
セキュリティは顔認証付きの最新型。
(——うん、なんかもう、いかにも“この人”が選びそうな物件だ)
『ようこそ』と言わんばかりに、無音で開く自動ドア。
結月は思わず、声が漏れた。
「……地球に帰還、って感じ」
*
「どうぞ」
昊が先に靴を脱ぎ、スリッパを差し出してくれる。
その動作が妙にきっちりしていて、まるで訓練された係員のようだ。
「ありがとうございます……って、え、これ……」
結月は思わず足を止めた。
玄関の壁に『靴の向き整列ガイド』と書かれたラミネートが貼ってある。
「……なにこれ」
「靴の向きが揃っていると、帰宅時のストレスが軽減されます」
「……理論的ですね」
「はい」
リビングに入ると、さらに驚いた。
冷蔵庫の中はまるで軍隊のように整列された食材たち。
乳製品、卵、野菜、調味料——すべてがラベル付きのケースに収まっている。
「……これ、誰がやったんですか?」
「僕です」
「ですよね」
キッチンの引き出しを開けると、カトラリーが種類ごとに仕切られ、スプーンとフォークは大きさ順に並んでいた。



