父はじっと昊を見つめたまま、何も言わない。
その沈黙に、結月の心臓がどくんと跳ねた。
でも、昊は動じない。
まるで、宇宙の無音の中にいるみたいに……。
「……ふん。理屈は立派だな」
「ありがとうございます」
「褒めてない」
「……そうですか」
そのやり取りに、結月と母は吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
母が笑いを堪えながら、昊に紅茶を出す。
「お父さん、結月が作るケーキの大ファンでね。一度諦めた時に、凄く落ち込んで。でも最近、製菓学校に通い始めたって聞いたから、凄く喜んでたのよ」
「母さん、余分なことは言わんでいい」
「はいはい。もう黙ってますよ」
父はふぅとため息をつき、カップに口をつけた。
「……まぁ、いい。後は、結月が決めることだ。……ただし、泣かせたら、成層圏どころかマントルの奥深くに埋めるからな」
「はい、肝に銘じます! 結月さんを大切にすると誓います」
その言葉に、結月の胸はじんわりと熱を帯びた。



