重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~


 彼は結月の手元に名刺を差し出した。
 結月は戸惑いながらそれを受け取り、目を落とす。

JSEA(ジェイシー)・宇宙飛行士 星野(ほしの) (こう)

「結婚して下さい」
「……は?」

 あまりの唐突な言葉に、結月の思考が一瞬止まる。

「……」
「……え、えっと、今、何て?」
「形式的なもので構いません。任務のためです」
「……はい?」
USSA(ユーサ)との合同プロジェクトに選ばれました。参加条件は、“既婚者のみ”なんです。今日、この店でお見合いの予定でしたが、相手が来ませんでした。そこで、あなたを見て思いました。適任だと」

 昊の表情は真剣そのもの。冗談の気配は一切ない。

「……えぇっと、ちょっと待って下さいっ! 今、何て?」
「結婚して下さい。できれば、今週中に」
「いやいやいやいや、早い早い早い!!」
「早いですか?」
「早いです!! ていうか、初対面ですよね、私たち!」
「はい、初対面です。ですが、あなたの行動は観察済みです。子どもへの対応、元彼への毅然とした態度、接客の所作。総合的に判断して、信頼に足る人物と結論づけました」

 結月は思わず両手を突き出し、はっきりと拒絶を示すように手を横に振った。