母さんが17の頃、学校帰りに虐められている女子高生を見付けた。 しばらくは様子を見てたんだけどついには我慢できなくなって一人の男に蹴りを入れた。
「いてえ!」 その声に大将らしい男の子が振り向いた。 「飛んで火に入る夏の虫とは言うけれどこんな可愛いやつが飛び込んでくるとはなあ。 ついでだ。 可愛がってやれ!」
それで一番大きな男の子が向かってきた。 でも母さんは怖いとは思わなかったんだって。
「ふーん、あんたらこんなことでもしなきゃ女を捕まえられないのかい? 役立たず。」 「何だと? てめえのその顔を見るも無惨に潰してやろうか?」
「やめときなよ。 泣きを見るだけだ。」 「てめえ、いい加減にしろ!」
母さんはヒョイット交わして背中を押した。 「うわーーーーーー‼」
男の子は押された勢いで空き地に入ってくる車に突進していった。 「てめえ、何をしやがるんだ‼ 許せねえ!」
「馬鹿だねえ。 私をやっつける前に友達を助けたらどうなんだい? それも出来ねえのか?」 リーダーに詰め寄っていく母さんに男の子たちはただただ震え上がっていた。
そこへ誰の通報を受けたのか警察官がやってきた。 「またお前たちか。 話は聞かせてもらうよ。」
あの車に突っ込んだ男の子は救急車で運ばれていったらしい。 倒れていた女子高生はなかなか立てなくて苦しんでいた。
「大丈夫かい? かなりやられたんだね?」 「死ぬかと思った。」
「あいつらは浜茄子高校の連中だよ。 この辺じゃ知らないやつは居ない。」 「そうなんだ。 でもあなたは、、、?」
「たまたま護身術を知ってただけだよ。 まあ気を付けるんだね。」 母さんはそう言って女子高生を送り出した。
そのことはそこいらの高校で広まってしまった。 「浜茄子のやつがやられたんだって。 しかも相手は女子高生だってよ。」
「誰だい?」 「何だったっけなあ、渋川恵理とか言ってたっけ。」
「渋川か、、、。」 「知ってるのか?」
「俺の姪っ子だよ。」 「何だ、安田君の姪っ子か。」
この安田健一こそぼくの本当の父さんなんだ。 あの頃は一人の男子高生に過ぎなかった。
二人が付き合い始めたのは高校3年の夏だった。 母さんは近くのスーパーでバイトをしていた。
その時、父さんも同じ店でバイトをしてたんだ。 母さんはレジ打ち、父さんは荷物係。
母さんが仕事を終えた頃、父さんも裏から汗だくになって出てくる。 「やっと終わった。」
「やっとはねえだろう? お客さんのためにはまだまだ頑張らなきゃ、、、。」 「そりゃそうだけど疲れるよ。 重たい荷物を毎日抱えてるんだから。」
「社会人になったらそんなもんじゃ済まないんだよ。 分かってる?」 「まあ、分からんでもないけど、、、。」
父さんはブツブツ言いながらいつもコーラを飲み干してから帰るんだ。 母さんはそれをじっと見詰めていた。
一週間二週間、一緒に働いているうちに父さんが変わってきた。 仕事に集中するようになったんだ。
ある時、仕事を終えて帰ろうとしていた母さんに父さんが話し掛けてきた。 「いつか二人でご飯を食べに行こうよ。」
「あたしとかい? やめといたほうがいいんじゃ?」 「何で?」
「この辺じゃあ怖い女だって言われてるんだ。 近付かないほうがいいよ。」 「そんなことねえだろう。 食べに行こうよ。」
「あたしを口説いてるのかい? ちっと早いんじゃないか?」 「そんなことねえよ。 俺はずっと見てきたんだ。 お前だったらいいなと思ってる。」
「まあ、店の前だから深い話はしないけど土曜日だったら空いてるから誘いたかったらうちに来なよ。」 「分かった。」
それで本当に家に来たもんだから母さんは誘いに乗って食事に行った。
「恵理を嫁にしたいのか?」 父さんは真面目な顔で聞いた。 「はい。」
「そうか。 でもお前には10年早い。 顔を洗って出直すんだな。」 父さんにそう言われて一度は潰えたかに見えたんだけど、3年後にまたまた二人は交際を始めた。
この時、安田健一は町で流行りの喫茶店のマネージャーをしていた。 「将来、俺だって人気店を出してやるんだ。」 周りにそう言っていたらしい。
店の仕事が終わるとコーヒーやココアの研究を続けていた。 「同じ物を出したって売れないんだからな。」
紅茶だって研究した。 ケーキやムースだって美味しいって評判の店を食べ歩いた。
そして30歳の頃、やっとの思いであの店を開業したんだ。 その時、母さんは妊娠していた。
それがぼくさ。 でも健一はぼくが生まれてすぐ家出した。
そして母さんには離婚届を送りつけてきた。 一晩泣きはらした母さんは離婚届を役所に出したんだ。
この頃、母さんは婦人服の店で働いていた。 そんな母さんの下には女の子たちが集まってきていた。
高校時代の噂は今も健在だった。 母さんは護身術をみんなに教えるためにグループを作った。
それがダイヤモンドローズさ。 悪の集団じゃない。
護身術を広めるための集団だって母さんはいつも話していた。 だから喧嘩は一切認めなかった。
「やられた時だけやるんだよ。 じゃないと護身術じゃないからね。」 母さんはいつもいつもそう言ってみんなをまとめていた。
そこでぼくも小学生の時から護身術を教えてもらったんだ。 最初はほんとに使えるのか心配だった。
「いてえ!」 その声に大将らしい男の子が振り向いた。 「飛んで火に入る夏の虫とは言うけれどこんな可愛いやつが飛び込んでくるとはなあ。 ついでだ。 可愛がってやれ!」
それで一番大きな男の子が向かってきた。 でも母さんは怖いとは思わなかったんだって。
「ふーん、あんたらこんなことでもしなきゃ女を捕まえられないのかい? 役立たず。」 「何だと? てめえのその顔を見るも無惨に潰してやろうか?」
「やめときなよ。 泣きを見るだけだ。」 「てめえ、いい加減にしろ!」
母さんはヒョイット交わして背中を押した。 「うわーーーーーー‼」
男の子は押された勢いで空き地に入ってくる車に突進していった。 「てめえ、何をしやがるんだ‼ 許せねえ!」
「馬鹿だねえ。 私をやっつける前に友達を助けたらどうなんだい? それも出来ねえのか?」 リーダーに詰め寄っていく母さんに男の子たちはただただ震え上がっていた。
そこへ誰の通報を受けたのか警察官がやってきた。 「またお前たちか。 話は聞かせてもらうよ。」
あの車に突っ込んだ男の子は救急車で運ばれていったらしい。 倒れていた女子高生はなかなか立てなくて苦しんでいた。
「大丈夫かい? かなりやられたんだね?」 「死ぬかと思った。」
「あいつらは浜茄子高校の連中だよ。 この辺じゃ知らないやつは居ない。」 「そうなんだ。 でもあなたは、、、?」
「たまたま護身術を知ってただけだよ。 まあ気を付けるんだね。」 母さんはそう言って女子高生を送り出した。
そのことはそこいらの高校で広まってしまった。 「浜茄子のやつがやられたんだって。 しかも相手は女子高生だってよ。」
「誰だい?」 「何だったっけなあ、渋川恵理とか言ってたっけ。」
「渋川か、、、。」 「知ってるのか?」
「俺の姪っ子だよ。」 「何だ、安田君の姪っ子か。」
この安田健一こそぼくの本当の父さんなんだ。 あの頃は一人の男子高生に過ぎなかった。
二人が付き合い始めたのは高校3年の夏だった。 母さんは近くのスーパーでバイトをしていた。
その時、父さんも同じ店でバイトをしてたんだ。 母さんはレジ打ち、父さんは荷物係。
母さんが仕事を終えた頃、父さんも裏から汗だくになって出てくる。 「やっと終わった。」
「やっとはねえだろう? お客さんのためにはまだまだ頑張らなきゃ、、、。」 「そりゃそうだけど疲れるよ。 重たい荷物を毎日抱えてるんだから。」
「社会人になったらそんなもんじゃ済まないんだよ。 分かってる?」 「まあ、分からんでもないけど、、、。」
父さんはブツブツ言いながらいつもコーラを飲み干してから帰るんだ。 母さんはそれをじっと見詰めていた。
一週間二週間、一緒に働いているうちに父さんが変わってきた。 仕事に集中するようになったんだ。
ある時、仕事を終えて帰ろうとしていた母さんに父さんが話し掛けてきた。 「いつか二人でご飯を食べに行こうよ。」
「あたしとかい? やめといたほうがいいんじゃ?」 「何で?」
「この辺じゃあ怖い女だって言われてるんだ。 近付かないほうがいいよ。」 「そんなことねえだろう。 食べに行こうよ。」
「あたしを口説いてるのかい? ちっと早いんじゃないか?」 「そんなことねえよ。 俺はずっと見てきたんだ。 お前だったらいいなと思ってる。」
「まあ、店の前だから深い話はしないけど土曜日だったら空いてるから誘いたかったらうちに来なよ。」 「分かった。」
それで本当に家に来たもんだから母さんは誘いに乗って食事に行った。
「恵理を嫁にしたいのか?」 父さんは真面目な顔で聞いた。 「はい。」
「そうか。 でもお前には10年早い。 顔を洗って出直すんだな。」 父さんにそう言われて一度は潰えたかに見えたんだけど、3年後にまたまた二人は交際を始めた。
この時、安田健一は町で流行りの喫茶店のマネージャーをしていた。 「将来、俺だって人気店を出してやるんだ。」 周りにそう言っていたらしい。
店の仕事が終わるとコーヒーやココアの研究を続けていた。 「同じ物を出したって売れないんだからな。」
紅茶だって研究した。 ケーキやムースだって美味しいって評判の店を食べ歩いた。
そして30歳の頃、やっとの思いであの店を開業したんだ。 その時、母さんは妊娠していた。
それがぼくさ。 でも健一はぼくが生まれてすぐ家出した。
そして母さんには離婚届を送りつけてきた。 一晩泣きはらした母さんは離婚届を役所に出したんだ。
この頃、母さんは婦人服の店で働いていた。 そんな母さんの下には女の子たちが集まってきていた。
高校時代の噂は今も健在だった。 母さんは護身術をみんなに教えるためにグループを作った。
それがダイヤモンドローズさ。 悪の集団じゃない。
護身術を広めるための集団だって母さんはいつも話していた。 だから喧嘩は一切認めなかった。
「やられた時だけやるんだよ。 じゃないと護身術じゃないからね。」 母さんはいつもいつもそう言ってみんなをまとめていた。
そこでぼくも小学生の時から護身術を教えてもらったんだ。 最初はほんとに使えるのか心配だった。



