(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん

 「いやいやいや、同じ学部生だよ。実習先から戻ってきたところ」
 「そう?」
 「そうそう。北海道から帰ってきたところなんだ」

 校外実習のことを説明すれば、キャリーバッグのことも、親し気な様子にも、一応の理解を日高くんは示した。

 「私のことは、そういうことで。日高くんは?」
 「映画をみてきたところ。そのまま映画で出てきた場所をみにいこうかなと」
 久しぶりに会話をすれば、やはり彼の口から出てくるのは映画のことだった。
 「そうだったんだ。あのね、雨一番って、覚えている?」
 すぐには思い付かないようで、でも日高くんは正解を引き当てた。
 「高二のパフェのときのことかな?」
 「そう、それ! 本当かどうか確かめたくって、北海道へいってきたんだよ」
 「え、マジ!」
 「でも、よく、わかんなかった」
 そんなことをいいながら、確認することもなく、地元行きの在来線に乗る。二年生になってからは、もう乗らなくなった路線である。
 これにはもう帰省のときにしか乗っていないといえば、日高くんは少し目を大きくした。

 ガタンガタンと電車が揺れる。吊革につかまって、流れる車窓をみれば、ときどきピンク色の塊を見つける。桜だ。北海道ではまだ咲いていない桜である。彼の地では、「雨一番」も「桜」も見つけることができなかった。
 こう思えば、日本列島って大きいなと思う。でも電車を使えば、半日でいくことができる。

 「駅に着いたら、パフェを食べる?」
 「そうねぇ~、新幹線に乗る前に駅弁を食べただけだし」
 「じゃあ、決まり! 今年は、どんな限定パフェかな~」

 依然、私は春のパ限定フェを食べる人枠のまま。でもいいかと思う。春のパフェを一緒に食べることができただけでなく、ずっと気になっていた「雨一番」のことを、今年は日高くん本人に伝えることもできたのだ。