ゲーム友達【番外編】



電話を切った早坂くんは、面倒くさそうに自分の頭をわしゃわしゃとした。

せっかくセットしたであろう髪型がぐちゃぐちゃだ。


「今日の夜うちに来るから、まぁ、夜飯は家だな。アイツらに何か買ってこさせる」

「うん、わかった」

素直に頷くと、早坂くんは何か物申したげな顔で私を見た。

「あかり、嫌いじゃなかった?初対面の人と喋ったりすんの」

嫌い、だった。
正確には今もべつに好きではない。

「私も大学生だから。コミュ力向上計画してる」

そう言うと、早坂くんはハハと笑った。

「何だそれ。例えば?」

「うーん。例えば…、ゼミの親睦会もちゃんと参加したし、バイト始めたのも大きいかも。バ先の先輩ともなるべくいっぱい喋るようにしてる」

「ほーん」

「あっ、バ先にもゲーム好きな人いてさ、今度一緒にやろうって話してる」

「…へぇ。
あかりがそんな努力してたとは、えらいえらい」

最後のえらいえらいは棒読みな気がするけど。

「でしょ。早坂くんの友達とも、ちゃんと仲良くできるから安心して」

「余計心配」

ぼそりと言った早坂くんはソファに背中を預けて天井を見た。
何か、心配させるようなこと言ったかな。

「その先輩、男?」

「バ先の?男だけど、別に変な人じゃないよ」

「変な人じゃなくても、オスはオスだからなー」

「オスって、やめてよ」

「オス、オス、男はみんなオオカミなんだ〜」

「ぷ。なにそれ、変な歌」

早坂くんが趣味の悪い替え歌を披露したところで、時計の針はちょうどお昼の12時を示していた。



「昼飯、食べに行く?近くにうまい店ある」

「…うん、行く」



さっきのキスがもっとしたい、なんて言えるはずもなく。

小さなキャリーケースはとりあえず玄関に置いたまま、早坂くんのおすすめだという定食屋さんでチキン南蛮定食を食べた。