ゲーム友達【番外編】

「でもさ、知らないとこ増えても、またそれを知るのも楽しくね?」

楽しい、か。
確かにそうかもしれない。

さみしいじゃなくて、楽しいに置き換えればいいのか。

「うん、そうかも…そうだね」

「遠距離の醍醐味」

早坂くんは握っていた私の腕を離し、両手で私の頬を包んだ。

「けど、言ってくれて良かった」

「うん…ちょっとスッキリしたかな」

「ちょっと?
えーっと、何だっけ。好き?さみしい、もっと知りたい……」

「やめてやめてやめてやめて」

「他には?まだあんの?」


少し力が入った早坂くんの両手の圧のせいで、私の頬が少しつぶれる。

「………独り占めしたい、とか。
女の子部屋に上げるな、とか。
告白されたならすぐ報告して、とか。
二十歳になってないのにお酒飲むな、とか、
友達いるのにゲームするな、とか…」

スラスラと出てくる私の文句に「多いわ」と早坂くんが突っ込むと、二人で吹き出して笑った。



「てか、部屋に女の子って何の話?」

「え…この前ゲームの時、声が聞こえた気がしたんだけど」

私がそう言うと、早坂くんは少し考えて「もしかして」と、スマホを取り出す。

「この声?」

流れ出すカラオケ動画。
途中で笑う声は、あの時聞こえた声と同じような女の人の声に聞こえる。
けれど画面に映るのは紛れもなく男の人に見えた。

「笑い方は確かに女子っぽいけど、男だよ」

「な、なんだ。私てっきり…」

「誤解が解けたな」

「ごめん」

「気になったならその時、言うように」

「…はい」

「ん。じゃあ、こっち来て。独り占めは俺がする」

そう言うと、早坂くんは両手を広げた。