しばらく黙りこくっていた私。
早坂くんが話しかけてくれていたけど、適当な相槌しかできてない。
こんな、子供みたいな自分が本当に嫌。
これじゃ、高校の頃の私と何も変わらない。
しばらくして、早坂くんが私の前に立った。
「あかり」
「うん」
「思ってることあるなら言わなきゃ分かんねーよ」
「………うん」
やっぱり早坂くんは気付いてる。
私が何か思ってることあるって。
なのに言えなくて、1人でモヤモヤしてるって。
伝え方が、わかんない。
言葉に出来なくて、その代わりに涙がポロポロとこぼれる。
「え?あかり?」
泣くのはズルい、
涙は女の武器、
なんて誰が言ったんだ。
こっちだって出したくて出してる訳じゃない。
そんなつもり無くても勝手に出てくるんだよ。
私は泣いてる顔を見られたくなくて、背中を向けた。
落ち着かなきゃ。
一旦、離れなきゃ、涙が引っ込まない。
別の空間に……
「お風呂っ」
「え?!」
「入りたい」
「ああ、風呂、入る?」
「入る」
「……案内します」
私はバタバタとスーツケースから着替えを取り出すと、早坂くんのうしろをついて行った。
早坂くんのアパートは、洗面台と脱衣所が分かれていた。
なんて優良物件。
「タオルこれ使って」
「ありがと」
「終わったらココ入れといて」
「ん、わかった」
「じゃ」
「…お借りします」
脱衣所の扉を閉める直前、早坂くんがひょこっと顔を出した。
「泣いてた?」
「…うるさい」
私が睨むと早坂くんは「はいはい」と笑って扉を閉めた。



