しまった。
間違えた。
どうしよう。
なんか変な味のジュースだとは思ったけれど。
早坂くんの友達もいるのに。
大学生にもなって、何してんだろ。
私はシンクにもたれかかりながら、ゆらゆらと揺れる視界の中、溜まった空き缶をゆっくりと洗いながら酔いが落ち着くのを待った。
「うしろ失礼ー」
陽気な声で私の後ろを通って冷蔵庫を開けたのは巻サンだった。
早坂くんにお酒を飲むなと言われていたけど、あれからずっとお酒を飲んでいる。
「早坂はいい男だよねー」
「…え」
「俺みたいなテキトー人間にも分け隔てなくてさ」
「テキトー人間……」
「あかりちゃん、男見る目ある〜」
どうやって言葉を返すか頭が回らなくて黙ったままでいると、巻サンは私の手元にあったお酒の缶を手に取った。
「あれま」
「…あ、」
「半分くらいしか飲んでないのに、顔真っ赤だよ」
「ま、間違えちゃって…お酒…飲んでしまって…」
私が、助けを求めるようにそう言うと、
「…ちょっとストップ。
そんな顔でこれ以上俺に近付かない方がいいよ」
巻サンは両手を上げて「ハヤサカくーん。タスケテー」とふざけた裏声で言った。
ああ。早坂くんが来ちゃう。
こんなみっともない姿、見られたくないのに。
「巻サンこんなとこで何……、え」
巻サンは、私が飲んだお酒の缶を早坂くんに渡した。
「…飲んだ?」
早坂くん、怒ってる。
私が、告白逃げした時と同じ目をしてる。
「…間違えちゃって」
小さな小さな私の声に、早坂くんは困ったように頭を掻いた。



