少しだけ背伸びした踵をおろすと、唇が離れる。
「…」
流れる沈黙。
早坂くんは、目を開いたままピタリと固まっている。
「……何か言ってよ」
「ヤバすぎ」
早坂くんはそう言うと右手で顔を隠した。
どうやら、私のささやかな攻撃はかなりのダメージを与えたらしい。
めずらしく早坂くんの照れた姿を見たら、こっちまで恥ずかしくなってしまった。
「アイス食べよ?」
「…食べよう。早急に食べよう」
早坂くんは私の手からアイスの入った袋を奪うと、そそくさとリビングのソファに座った。
それを見て、私は何だかおかしくてクスクスと笑った。
隣に座ってアイスの蓋をペリペリとめくると、早坂くんがポツリ。
「あかりといると中学生に戻るから困る」
「私が子供っぽいてこと?」
「ちがう。
俺が。思春期真っ只中のクソガキになるってこと」
「なにそれ、意味分かんない」
「…分かんなくていーよ」
それから、早坂くんの友達がくる午後5時まで、ふたりでボードゲームに熱中して過ごした。
これじゃ本当に中学生だ。



