友達ドール2


やがてその場が落ち着きを取り戻し、ようやく私はミオと教室へ向かう。


「ホント最悪、許せない!あんな嫌がらせしてきたやつ!」


「…そうだね」


手の上を這い回る虫の、あの手足の感触が忘れられなくて、私は制服の裾に手をこすりつけた。

教室に入ると、すぐに何人かの女子生徒がミオを囲む。


「下が騒がしかったけど…何かあったの?」


「それが聞いてよ!もう最低なやつがいて___」


説明をミオに任せて、自分の席へ向かう。

私は目を丸くした。

そこに、“花”が飾られていたからだ。


「…え…」


私は今、教室に来たばかりだ。

いつも自分で飾っている白い花瓶と造花は、まだカバンの中にある。

だけど目の前の机の上。

黒い花瓶に挿された菊の花は、確かにそこに存在していた。

手を伸ばし、花に触れる。

ザラついた人工的な質感から、それが造花であるとすぐに分かった。

私は後ろの席へ視線を向ける。

周りに聞こえないように、小さな声で囁くように聞いてみた。


「これ、もしかして琴李が…?」


だけど、反応が返ってこない。

聞こえなかったのかな…?

そう思い、もう一度声をかけてみた。


「あの、琴李___」


琴李が私を無視するかのように顔を逸らした。

私はようやく気づく。

これが琴李の新しい“イジメ方”なんだ。

さっきの虫も、そして今…私を無視しているのも。

昨日、彼女が言っていたじゃないか。

“明日から、期待しててね”___。

あの言葉が示していたのは…コレだったんだ。

私は何も言わずに席につく。

心の中で琴李への賞賛と、これからエスカレートしていくであろう“私イジメ”への僅かな恐怖が生まれつつあった。