友達ドール2


「あ…実由ちゃん、お帰りなさい」


部屋着姿の琴李に「ただいま」と返事をして言葉を続ける。


「午後からの雨、大丈夫だった?」


「うん、折り畳み傘を持ってたから…無事にお買い物できて良かった」


「お買い物?どこか寄ってたの?」


「えへへ…うん、ちょっとね」


そう言ってリビングへ向かう琴李が、すれ違いざまにそっと耳打ちをした。


「明日から、期待しててね」


そう呟いて由太の元へ向かう彼女の背中を見つめて首を傾げる。

…どういう事だろう?


「まぁ、いいか」


そうポツリと呟いて、着替えのために自室へと向かった。

その翌日。

私は琴李の言葉の意味を知る事になる。

朝が来て、いつものように由太を小学校まで送り届ける。

今朝は琴李が既に登校していたから、由太は少し不服そうにしていた。

自分の学校の門をくぐり、下駄箱に向かう。


「おはよ、実由」


「おはよう」

ミオと挨拶を交わしながら自分の下駄箱へ向かった。


「今日は成宮さんと一緒じゃないの?」


「うん、今日は先に行くってメモがあった」


話しながら、上履きを取り出そうと下駄箱を開ける。

その瞬間、中から何かが飛び出してきた。


「きゃっ___!?」


「実由!?どうしたの…って…」


ミオが私の制服、その胸元で動く物体を見て後ずさる。


「やっ…嫌だ…!!ゴキブリ!?」


長い触角。

黒光りする体に、不快な音を放つ羽音。

大量のゴキブリがカサカサと音を立てながら辺りに散らばった。


「きゃあっ!?」


「来ないで!気持ち悪い!!」


響き渡る生徒達の叫び声に、先生達も総出で動き回る虫を捕まえ、逃がして、駆除をしていく。

その騒動を離れた階段から見下ろす姿に気づいた。

私は視線を向ける。

そこには琴李がいた。

彼女は感情の読めない表情のまま、静かにその場を離れていく。