それから一週間が経った。
朝。
学校の下駄箱の中に入っていたメモ用紙を手に取り、私はため息を吐く。
四つ葉のクローバーと白いウサギが描かれた可愛らしいメモ。
その中央には女の子らしい丸っこい字で一言。
「…“ばか”…ねぇ…」
控えめに、小さく書かれたそれを見て、そっとカバンにしまった。
頭を抱えたい衝動に襲われる。
これはイジメと呼べるのだろうか…?
「ど、どうかな…?イジメられる子の気持ち、何か分かった?」
隣で靴を上履きに履き替えていた琴李がソワソワしながら問いかけてくる。
「えっと…ちょっとこっちに来て」
琴李の柔らかな手をとり、一階にある女子トイレの個室に二人で入る。
花の香りだろうか。
芳香剤の強い臭いが鼻を刺激した。
「えっと、イジメの事なんだけど…もう少し激しくできる?」
「えっ…足りてなかった?」
私が頷くと、琴李の顔が申し訳なさそうに曇っていった。
「ごめんね…“あほ”とかも書いた方がよかったかな…」
「あー…ううん、そうじゃなくてね」
苦笑しながらどうしたものかと頬を掻く。
彼女の中ではしっかり私への“イジメ”を遂行していたつもりだったのだろう。
人によってはコレもイジメになるのかもしれない。
けど…私には物足りなかった。
知りたいのはあの子と…雛と同じ気持ちだ。
あの子の受けた痛みはこんな物じゃないはずだから。
「琴李が頑張ってくれてるのはスゴく分かるよ。でも、もっと徹底的に私をイジメてほしいの」
「でも…実由ちゃんに嫌な思いさせるなんて…」
「イジメって嫌な思いをする物でしょ?私は大丈夫だから…お願い」
やるならとことんやらなくちゃ。
それこそ、精神が追い詰められるくらいに。



