「雛…ちゃん?」
「うん、それで…その子がイジメられてたから、私もイジメられてる子の気持ちを知りたいの」
ミオにすら言わなかった本音が琴李にはスルリと言えて、自分で自分に驚く。
心のどこかで琴李なら分かってくれる___理解してくれるんじゃないかという期待があったのかもしれない。
私は隣の様子を窺う。
琴李は少しだけ首を傾げて、何か考えるように口元に人差し指を添えていた。
…困らせてしまったんだろうか。
そう思った矢先、予想していなかった返事が耳に届く。
「私が…イジメようか?…実由ちゃんの事」
「えっ…」
まるで時間が止まったかのように、私の思考が停止していく。
真っ白になった頭の中、琴李の言葉がグルグルと巡っていた。
「…実由ちゃん?」
名前を呼ばれて我に返る。
私は琴李を見つめた。
「いいの?…こんな変な事に付き合わせちゃって」
自分の考えがおかしいという事は、とっくに分かっている。
イジメられっ子の気持ちが知りたいから、誰かにイジメてもらいたい。
そんな変わった願望に付き合ってくれる人なんていないと思っていたけど…。
琴李が穏やかに目を細めた。
「実由ちゃんの力になれるなら…私、何でもお手伝いするよ」
「琴李…」
こんな事を頼めるのは、受け入れてくれるのはきっと…この子だけだ。
私は彼女の両手をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう。明日からお願いできる?」
あの子への…。
雛への“償い”が、僅かに動き始めたような気がした。
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