友達ドール2


「あ、あの…成宮(なるみや) 琴李です。よろしくお願いします」


エリスさんからもらったという苗字、“成宮”という名は思っていたよりずっと彼女になじんでいた。

パチ…パチと、最初はまばらだった拍手が徐々に大きくなっていく。

やがて盛大な拍手に包まれた琴李が、深々とお辞儀をした。


「それじゃあ成宮さん。空いてる席に座ってね」


先生に促され、琴李が並んだ机の隙間を通って歩き出す。

私の机の横を通り過ぎようとして、彼女の足が僅かに停止する。

視線は机の上。

飾られた花瓶と造花を見つめていた。


***


「琴李、学校の中を案内してあげるよ」

二時限目が終わるなり、私は真後ろの席に座る琴李に声をかける。

視界の端で琴李に声をかけようとしていた生徒達が、伸ばしかけた手を引っこめているのが見えた。

私が先に声をかけたから声をかけづらいのだろう。


「ほら、行こう」


琴李の手を取り、廊下へ出る。

三階と二階を繋ぐ階段の踊り場に差しかかった時、琴李が話を切り出した。


「実由ちゃんは…イジメられてるの?」


「えっ?」


「机の上のお花、見たよ。も、もしそうなら…私、皆に止めてっていうから…」


うつむいてプルプルと震える彼女の両肩に、私はそっと手を置いた。


「違うの、大丈夫!あれは自分でやってる事だから…」


「え…自分でって…実由ちゃんが、自分自身をイジメてるの?」


困惑した様子で目をパチパチと瞬かせる琴李。

…その反応。

やっぱりそうだよね。

私は踊り場の壁に背を預けた。

目の前をはしゃいだ生徒達が通り過ぎていく。

それを眺めながら、隣にいる琴李へ呟いた。


「私ね、雛っていう友達がいたんだ」