「ホントに寝てる…」
言われた通りに行動する子だ。
夕飯を食べている時も“30回は噛んでから飲み込みなさい”という私の言葉を律儀に守っている様子だった。
まぁそれは琴李にではなく由太に言った言葉なんだけど…。
この子はそういう風に作られているんだろうか。
「いや、私の注文通り…なんだっけ」
私の言う事を聞いてくれる子。
反抗的な態度を見せない子。
とても、素直な子。
眠っている琴李の目元にかかっていた髪を、私は指先で整える。
柔らかな毛束がスルリと指から落ちていった。
「…んぅ…」
僅かに身じろいだ後、琴李がパチリと目を覚ました。
私の姿を見るなり、ふにゃりと力の抜けたような笑みを浮かべ、彼女が言った。
「実由ちゃん、お帰りなさい」
「ただいま、ベッドで寝ててよかったのに」
「実由ちゃんを待ってようと思ってたんだけど寝ててって言われてたから…ごめんね、起きてた方がよかったかな…?」
私の機嫌をうかがうような視線に、小さく笑う。
「大丈夫だよ、怒ったりしてないから」
「…よかった」
琴李が安心したように柔らかく目を細めた。
二人で身を寄せ合いながら、狭いベッドに並んで横になる。
「実由ちゃんの匂いがする」
譲ったもふもふの枕に頭を預けた琴李が、どこか満足そうに呟いた。



