友達ドール2


「…琴李ちゃん」


そう言ってなぜかベッドから下りて、机へと向かい備え付けのイスに座った。


「どうしたの?」


「どうもしない!オレ、今から宿題するからねーちゃんも琴李ちゃんも出てってよ」


「は!?」


“今から宿題する”なんて、思わぬ言葉が弟の口から飛び出して私は困惑した。

こんなのいつもの由太じゃない。

宿題はいつも後回しで、勉強苦手でテストの点数も悪いこの子が、一体どうしたんだろう。

私は琴李に耳打ちする。


「エリスさんの力って、性格も変えちゃうの?」


琴李は小さく首を振った。


「ううん、エリス様の力はあくまでも“記憶の上書き”だから…関係ないと思うよ」


じゃあ何で___。

そう思った時、ふと気づいた。

由太の耳が赤く染まっている事に。

しかもよく見るとチラチラと琴李を盗み見ているようだった。

…これは、もしかして…?

試しに、由太にこんな提案をしてみた。


「ねえ…宿題やるなら、琴李に教えてもらったら?」


「えっ…!?」


由太が凄まじい勢いで私を見た。

その顔は耳と同じで赤く染まっている。

やっぱり。

由太は琴李を意識している。

好意を持っているからカッコつけて勉強しようとしていたんだ。

弟の意図が分かると、何だか可愛らしく思えてきて、私は笑みを浮かべた。


「琴李、私は夕飯を作ってくるから…その間、由太に勉強を教えてあげててくれる?」


「う、うん…私でいいなら___由太君」


琴李が由太の机に向かい、話しかける。


「えっと…お勉強、一緒に頑張ろうか?」


恥ずかしそうに頷く由太。

二人を残し、私は部屋を出た。

その足で隣にある自分の部屋に行き、カバンを置いて制服から部屋着へと着替える。

由太が琴李を意識しているのは意外だったけど…琴李の存在自体に違和感を持っている素振りはなかった。