「こちらにいるこの子が、実由様のご注文された“友達ドール”でございます」
その言葉に私は目を瞬かせて女の子を見た。
胸元まで伸びた艶やかな黒髪をサラリと揺らしながら気恥ずかしそうにうつむく彼女は、どこからどう見ても人間そのものだ。
「あなたは…本当にドールなの?」
問いかけると彼女は小さく頷いた。
たれ目がちの大きな瞳が遠慮がちに私を見つめている。
「名前、は…?」
その質問に、ドールだという女の子は困ったように首を振った。
…もしかしてこの子、名前がないの?
「実由様」
エリスさんが私の名を呼ぶ。
「お察しの通り、この子にはまだ名前がございません…この子の名前は、実由様につけていただきたいのです」
「…え、私が…ですか…?」
突然の申し出に戸惑う私を見て、エリスさんが微笑む。
「ええ。ぜひ、素敵な名前をつけてあげて下さい」
私は女の子へと視線を移した。
私と目が合うなり頬を染めて目を伏せる彼女を見て、私は唐突にあの子を思い出す。
初めて出会った時のあの子も、恥ずかしそうに私から視線を逸らしていたっけ…。
不思議な話だ。
あの子と正反対の子を作ってもらったはずなのに、結局あの子と似ている部分を、私は彼女に探している。
やっぱり…どうしても、私はあの子を忘れられないのだろう。
それならいっそ、あの子の名前に似せても良いかもしれない。
…よし。
それなら…どんな名前が良いだろう。



