この人はさっきから何を言ってるんだろう?
全く話が分からない…。
おまじない?
店に招かれる…?
「あの…私、家に帰りたいんですけど…」
ぎゅっと拳を握りながらエリスさんを見た。
彼女は変わらず口元に微笑みを浮かべている。
その形のいい唇が開いた。
「大丈夫…目が覚めれば、すぐにでもお帰りいただけますわ。…だってここはあなた様の夢の中なのですから」
「…私の…夢の中…?」
「えぇ、だからこそ私にはあなた様の何もかもが分かるのですよ。お名前はもちろん、年齢や好きな物に家族構成…過去の忘れ難い記憶すらも」
「………」
今、聞いた事が本当なら___。
この人は知ってるんだ。
私の罪を。
あの日の、後悔を。
エリスさんがドレスのスカートをひるがえしながら背を向けた。
店に並んだ人形達を優しくなでるその背に、問いかける。
「…さっきの…“友達ドール”って何の事ですか?」
エリスさんが私に視線を向ける。
「この店の名前、そしてここに並んだ人形…ドール達の事です。来店して下さったお客様との出会いの記念に、一体ずつお配りしているんですよ」
「…何、それ…」
小声で呟く。
まさしく“夢”らしい設定だな、と思った。
どこか突拍子がないというか…だって普通はあり得ないでしょう。
お客さんが来るたびに商品をプレゼントしていたら商売になんてなるワケがない。
やっぱり夢なんだ、ここは。
夢を見ている途中で、これが夢だと気づけるタイプのやつ。
そう納得すると少しだけ警戒心が解けるのを感じた。
途端にこの“夢”への興味が沸いてきて、私は店の中を改めて見渡す。
服屋さんに置いてあるマネキンみたいだけど…それよりずっとリアルな作りをしている。
頭から生えてる髪の毛も、閉じられた瞼のまつげも…本物みたいだった。



