「あら…いらっしゃいませ」
そう声をかけられて、ハッとする。
とっさに辺りを見渡し、自分が今どんな状況にいるのかを確認した。
室内だ。
人の形をした物体が所狭しと並んでいる。
…ここは何かのお店?
何で私はこんな所にいるの…?
最後の記憶は家の自室、ベッドの上だったはずだ。
そういえば、着ている物も違う。
今現在、私が着ているのはいつも寝巻きにしているロングTシャツと短パンではない。
…この、服は…。
「…あの日、捨てたはずなのに…」
「どうやら困惑なさっているようですね、多田 実由さん」
突然、見知らぬ相手から名を呼ばれて身構える。
「…誰ですか…?」
警戒する私に、目の前の女の人は柔らかに微笑む。
ミントグリーンのドレスを着た、キレイな人。
その女の人はドレスの裾をつまんで丁寧に頭を下げてみせた。
「私はこの店の店主を務めております、エリスと申しますわ。不躾な質問ですが…“友達ドール”という名称に聞き覚えはありますでしょうか?」
「知りません…そんなの」
素直にそう答える。
するとエリスさんは艶やかな頬に手を当てて口から小さく息をもらした。
「それは…困惑なされるのも仕方ありませんわね。こういう事は時々あるのですよ…“おまじない”をしていない方が店に招かれる事が」
「…はぁ…」
「ふふ、きっと“友達”への思いがお強かったのですね…素敵な事ですわ」
優雅に笑みを浮かべるエリスさんをポカンと眺める。



