「…私…生きてても、いいの…?」
「もちろん」
ひなたに抱き締められながら、私は静かに頬を濡らした。
私の罪は消えない。
罪悪感も消えない。
だけど、それを背負って生きていればいつか。
償える日が…来るかもしれない。
雛の事を忘れずに生きていれば…いつか、きっと。
***
揺れる電車の中、ひなたと横並びになって座っている。
窓の外にはまだ青空が広がっていた。
それから新幹線に乗り換え、自分達の暮らす町の駅に到着するまで、私達の間に会話はなかった。
その代わり、その指先だけは固く繋がれている。
ホームを抜けて改札口を通った時、駅の近くに花屋さんを見つけた。
私はようやく口を開き、言った。
「ちょっと寄りたい所があるんだけど…いい?」
頷いたひなたを連れて花屋さんへ入る。
そこで花の苗を買って、家へと帰った。
「何しているの、奏ちゃん」
帰るなりガサゴソとキッチンの冷凍庫をあさる私を見て、ひなたが聞いた。
「うん…ちょっと…ね」
冷凍庫の奥底。
ようやく目的の物を見つけ、それを手の平に置く。
アルミホイルに包まれたそれは、とても冷たかった。
これをここに隠したのは誰でもない、私自身だ。
アルミホイルを開き、現れたのはラップにくるまれた二つの潰れた円形の物。
「これね…雛の、両目なの」
「雛ちゃんの?」
ひなたの目が丸くなる。
当然の反応だ。
食料品を保存しておく場所に人体の一部があるなんて、普通はあり得ないし。
ラップを開いて雛の崩れた眼球を見た。
「雛の目をくり抜いた後、私…捨てる事も出来ずに持って帰ってきちゃって。冷凍庫の中にこうして隠してたの。…どうかしてるでしょ?」
あの日、衝動的に持ち帰ってしまったそれを持って私は外に出た。



