死ぬ事が怖い。
苦しい思いをしたくない。
ひなたにも…あんな苦しい事、もう二度とさせたくない。
できない、怖い、私は___。
雛が死んだあの時と、何も変わってない。
自分の事ばかり。
雛の事も、ひなたの事も、考えてない。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!!」
地面に伏せて謝り続ける私の背中が、ゆっくりとさすられる。
「大丈夫…大丈夫だから泣かないで、奏ちゃん」
ひなたの声が優しく耳に届く。
私は湿った土をガリガリと爪でひっかき、こみ上げてくる悔しさを押し殺した。
それでも、やっぱり。
死ぬのは怖くて。
今のこんな私を見たら、雛はなんて言っただろう。
幻滅される?
それとも…。
「ダメ…!雛は…きっと怒ってる…!こんなんじゃ…こんな私じゃ雛に許してもらえない…!」
土まみれの手で頭をかき乱す。
それを止めてくれたのは、ひなただった。
白くてキレイな手が汚れるのもお構いなしに。
私の手を取り、ひなたは笑う。
「私が、奏ちゃんの事を許すよ」
その言葉に…私はゆっくりと顔を上げる。
ひなたと目が合った。
涙や鼻水、土で汚れた私の顔を、そっと指先でぬぐってくれる。
「雛ちゃんが奏ちゃんを許さなくても、奏ちゃんが自分自身を許せなくても…いいの。私があなたを許すから」
瞳に映ったひなたの背中に、白い翼が見えた気がして目を瞬かせる。
目の前の天使が、再び口を開いた。
「だから…それで、納得してくれないかな?」
「…納得…って、何を…?」
「私が許した事を…私と一緒に“生きていく”理由にしてほしいなって。…それじゃ、ダメかしら?」
濡れた頬を風がなでていった。
…生きていく、理由。
ひなたと、二人で…?
今までずっと死ぬ事ばかり考えてきた。
そんな私が…生きる事を考えていいの…?
許すと言われた心が、震えていた。



