「早く着いちゃった…」
スマホを見たら1時間くらい早く来ちゃってた。
どこかで時間を潰そうと思って、スマホを持ったまま、駅の向かい側にあった喫茶店に向かおうとしたの。
その時、猛スピードの車が突っ込んできて…。
私はひかれそうになった。
“逃げなきゃ”って思って後ろに下がる。
足がもつれて、尻もちをついて…。
その時に持ってたスマホを落としちゃって…私は無事だったけど、スマホはタイヤにひかれてバキバキ。
走り去っていく車を見ながら、ボーッとしてて。
心臓が、ドクンドクンって脈打ってて…。
私、その時、思ったの。
…生きててよかった、って。
………。
変な話でしょ?
今から私は、雛と死のうとしてるのに。
車がこっちに向かって走ってきたあの瞬間…死にたくないって気持ちが強くなっていたの。
私は、まだ死にたくない。
そう実感したら…死ぬのが、怖くなった。
「…ど…どうしよう…」
スマホは電源が入らないし、メッセージも送れない。
でも直接、初対面になる雛を目の前にして自殺を断る勇気も…私にはなかった。
体がカタカタ震えだして、私は…。
このまま、時間が経つのを待つ事にしたの。
何とか立ち上がって、駅の傍にあったベンチに座った。
お昼時だっていうのに、人がいなくて。
時々、駅から降りてきた人がいるくらい。
たまに駅の中に設置された時計を見ながら、少しずつ進む秒針を眺めてたりして。
待ち合わせの時間になった。
私はその場から動けなかった。
また、時間が経った。
それで…1時間が経って、やっぱり行かなきゃって思ったの。
会って、謝って、それで、それで。
やっぱり、死ぬのは止めようって…。
私ね。
まだ雛は生きてるって思ってたの。
だから…。



