ひなたが傍にしゃがみこんで、私の背中をさする。
吐き出す物が胃液だけになっても、私の嘔吐はしばらく続いた。
頭の痛みは、もう感じない。
むしろモヤが晴れたように、スッキリとしている。
「はぁ…っ…はぁ……」
それからどれくらい経っただろう。
私は乱れた息を整えるために、小さく浅い呼吸を繰り返した。
ひなたがレバーに手を伸ばし、吐しゃ物で汚れたトイレの水を流す。
それを眺めながら近くの壁にもたれかかった。
吐く事に疲れて、立ち上がる気力すらわかない。
トイレの床に座りこんだまま、ぼんやりとした目で呼吸をする。
「待ってて、お水を持ってくるから」
ひなたがパタパタと足音を立てて去って行く。
それを力なく視線だけで追いかけた。
恐らくキッチンに行ったのだろう。
遠くから戸棚を開く音がした。
カチャカチャとコップを取り出す音、そして水を注ぐ音がする。
ひなたが戻ってきたのはそれからすぐの事だった。



